前回の記事では、感染症対策の鉄板1~3に加え、湿度管理の大切さについても触れました。
1.感染した人とそれ以外の人とで部屋を分ける
2.家の中の消毒
3.部屋の換気
今回は、特に「マスク」と「家の中の消毒」がなぜ重要なのか、基本的な感染症対策を踏まえた上で、大学時代に学んだ世界保健機関(WHO)のガイドラインを交えてお話ししたいと思います。
家族全員が安心できる!感染症対策とちょっとした工夫
コロナやインフルエンザはもちろん、感染性胃腸炎の原因となるノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスなど、どの感染症も共通して、ウイルスが便や嘔吐物を介して乾燥・飛散し、それを吸い込むことで感染する可能性があります。
ですから、感染した人の体内から排出された物の処理をする場合、作業を始める前に清潔な手で、清潔なマスクを装着することからはじめましょう。
症状が出ていない家族であっても、廊下や洗面所、キッチンなどを移動する際には、互いにマスクをつけることで、家庭内感染のリスクを下げられます。
感染症対策の重要性とマスクの役割:コロナとインフルの場合
数年前、同居家族のハルちゃんがコロナに感染し、発熱しました。家族の中には感染症対策に無関心な人が多かったのですが、私はリスクを理解していたため、母と同室になるのは避けたかったのです。しかし、最終的に多数決で決まり、仕方なく母と同室で寝ることになりました。
母の寝室は6畳もない狭い部屋で、窓が一つしかありません。わたしはマスクを装着し、布団を敷いてから、枕は母と顔が向き合わないよう180度の逆向きにして、一晩を過ごしました。
翌日、ハルちゃんのお母さんから「アキちゃんも感染していた」と連絡があり、わたしも検査の結果、感染が確認されました。しかし、母は幸いにも感染せず元気でした。その後、すぐに部屋替えをして、感染拡大を避ける工夫をさらに強化しました。
隔離しようにも部屋が足りない場合でも、このように『ひと工夫』することで感染リスクを減らすことができると思います。
以下では、感染症対策についてさらに詳しくお話ししますので、ぜひ引き続きお読みください。
油断していたら感染してしまったエピソード
実は、わたしが初めてコロナに感染してしまったのは、流行が連日ニュースで取り上げられていた頃のことでした。この時期、防ごうと思えば防げたはずだったのにと、今でも反省しています。
ハルちゃんが発熱する前、普段はしないくしゃみを頻繁にしていたことには気づいていました。でも、「今回も大丈夫だろう」という気持ちがどこかにあって、ノーマスクのまま、ハルちゃん、アキちゃんの二人と、至近距離で長時間会話をしてしまいました。
人生で初めてインフルエンザにかかったのも、油断していた時のことでした。インフルエンザに関しては、これまで生まれてから一度もワクチン接種を受けたことがなく、仕事をしていた時も社内で感染者が出ても、私はなんともなく過ごしてきました。しかし、海外にいた時に一度だけ感染してしまったのです。
異国での生活に慣れてくるうちに、手洗いやうがいをあまり気にしなくなり、その結果、生活が雑になってしまいました。そうした中で、ついに「インフルエンザA型」に感染してしまったんです。それ以来、反省し、改めて手洗いやうがい、公共物を使用する際には事前に消毒をするなど、感染症対策を徹底するよう心掛けています。
家の中でできる感染症対策&感染拡大を防ぐための工夫
感染リスクを減らすためには、ウイルスの飛沫を浴びないことや空気中に漂うウイルスを吸い込まないこと、つまり体内にウイルスを取り込まないことが大切です。
そのため、ウイルスが付着した手で目や鼻を触らないことも非常に重要です。
(大人でもそういう人はいますが…)特に小さなお子さんがいる家庭では、子どもが鼻を触った手であちこちを触ることが多く、それが感染のきっかけになることもあります。
ウェットティッシュの工夫
ウイルスが付着した手で、目が痒いからといって擦ったり、マスクで鼻がむずがゆいからといって触ったり、その手でお菓子を食べたりすると、それを経由してウイルスが体内に入ってしまいます。
普段はそれでも問題ないことが多いですが、感染症にかかってしまった人が触ったことに気づかず、ウイルスを広げてしまうことがあります。
これを防ぐために、テーブルなどの手が届くところに除菌できるウェットティッシュを常備しておき、使う前に一度拭いてからテーブルやリモコンを使うようにしています。
ウェットティッシュは百円均一などで手に入りますが、取り出すと短時間で乾いてしまうし、そんなに広範囲を拭くわけではないので、コマメに使うとすぐになくなってしまいます。
そこで私は、清潔な手でウェットティッシュを一枚取り出したら、すぐに清潔なハサミで4等分にカットし、残りはまた容器に戻しています。これで頻繁にウェットティッシュを買いに行く手間が省けます。
家庭内感染予防:コロナ、インフル、感染性胃腸炎対策
前回の記事、そしてこの記事の前半では、インフルエンザウイルスやコロナウイルスはどちらもエンベロープ(脂質膜)という膜で覆われているため、この膜を破壊したり、ウイルスが活性化しない環境を整えることで、「不活性化」し、感染力を低下させることができるとお話ししました。
家の中の消毒:コロナとインフルの場合
既にご存じの方も多いと思いますが、改めてコロナやインフルエンザウイルスの消毒方法を確認したいと思います。コロナやインフルには以下を用いた消毒が推奨されています。
- アルコール(濃度70%以上95%以下のエタノール)
- 亜塩素酸水
- 次亜塩素酸水
- 洗剤(界面活性剤)
- 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
- 熱水
このうち、熱水を除いたものはすべて化学品に分類されます。化学品は、濃度の調整や取り扱いに注意が必要な場合が多く、普段からこれらに慣れていない人にとっては準備や使用が少し面倒に感じられるかもしれません。わたしもそのうちの一人です。
そう考えると、誰でも簡単に使いやすいものとしては、アルコールスプレー(濃度70%以上95%以下のエタノール)が最適ではないでしょうか。ドアノブやテーブルなど家の中の消毒は、アルコールスプレーを中心にするのが楽で良さそうです。
最近はスーパーのレジ待ち中に真後ろで大きな咳・くしゃみを連発している人がいる場面に遭遇する事も多くなっています。しかも何故かその距離がとても近かったりして・・・。
外にいる時は良いのですが、帰宅後の持ち物の取り扱いにわたしは注意しています。その時に浴びた飛沫が乾燥して、家の中を漂うのではと考えたらちょっと嫌なので、個人的予防法になりますが、こんな対策をしています。
帰宅後、すぐに人がいない玄関など広い場所に移動し、ふだん洗えないバッグ、リュックやコートを中心にファブリーズでもするかのように、アルコールスプレーを吹きかけ、それからはじめて元あった場所に収納するようにしています。こうする事で付着したウイルスが不活性化される確率が高いと考えています。
ただし、この方法は、素材や染料によっては不適切な場合があります。もちろんそばに人がいたり、火気がある所では危険ですので、使用には十分注意が必要です。
こちらの方法はあくまで個人的な対策法ですので、実施する際はご自身の判断と責任で行ってください。
また、これは個人の考察ですが、親世代、特に女性の場合、外出時には『よそ行き』の服に着替え、帰宅後はその服を陰干しし、家で過ごす時や就寝時には別の服を着る習慣があります。このように衣服を使い分けることで、ウイルスの部屋への持ち込みを避け、長時間触れることを防ぐ効果があると考えられます。
コロナやインフルエンザだけでなく、胃腸炎などの感染症は、家庭内での感染拡大を防ぐことが大切です。以下では、インフルエンザやコロナウイルス、そして胃腸炎の家庭内での感染予防に役立つ消毒方法について詳しくご紹介します。
感染性胃腸炎を予防するための簡単な方法
実はノロウイルスやロタウイルス、サポウイルスなど、感染性胃腸炎の原因となるウイルスはアルコール消毒では十分な効果がありません。ここから先は、感染性胃腸炎の消毒についてご紹介しますが、この方法は、インフルエンザやコロナウイルスにも共通して使用する事が出来ます。
手洗いの方法
まず、とても簡単な予防法が手洗いです。同居のご家族もそうですが、看病をする方は特に石鹸でしっかりと手を洗うことが重要です。
手洗いの際は、石鹸を使いましょう。石鹸を泡立てたら30秒以上かけて洗います。両手の手のひらはもちろんですが、指の間、爪の先から手首までを洗います。その後、流水できれいにすすぎます。看病をする方は汚物の処理をする事も多いと思います。その場合には、この手洗いを2回行いましょう。
実践的な消毒法で介護が楽になる
家の中の消毒ですが石鹸で泡立てて行うわけには行きませんから、こちらは塩素系漂白剤を水で薄めたものを用意し、それで消毒してください。
とはいうものの、漂白剤にも様々なものがあって成分を確認するのも手間なので、わたしはキッチンの除菌用に常備しているボトルタイプの台所用漂白剤(キッチンハイター)などを使用しています。
衣類用の漂白剤は主に繊維を対象にした成分や濃度が含まれていて、消毒効果を十分に発揮できないことが多いため、キッチン用の液体タイプを使用することをおすすめします。また以降で説明する濃度や成分も確認してください。
漂白剤の取り扱いについてですが、原液を素手で触ると危険です。わたしは「ちょっとだけ」と思って素手で触ってしまい、気づいたら指先の皮がむけていることがあります。こうならないためにも、手袋は必須です!また、感染対策の初期段階でマスクは装着し換気もされていると思いますが、漂白剤を取り扱う時にもマスクの装着と換気を忘れずに。
希釈する時は、パッケージに記載された希釈比率を守って使用しましょう。
消毒液を作る際は、お湯を使用してしまうと、その効果が薄れますので、この時期は辛いですが水で薄めてください。
WHOの推奨によれば、次亜塩素酸ナトリウムの消毒液は0.1%(1000ppm)が一般的とされています。
消毒液の希釈比率をわかりやすく例えると、ハイターには5~6%濃度のものが多いため、キャップ1/4杯(約6~10ml)を水1リットルで薄めると、ほぼ0.1%になります。ペットボトル半分程の量(250ml)の水であれば、キャップ1杯となります。この薄めた溶液をキッチンペーパーや布に浸し、ドアノブなどを消毒すると良いでしょう。必要な量に応じてこの分量を調節してください。
なお、くれぐれも、作った消毒液は24時間以内に使用してください。大量に消毒液を作り置いても、24時間を過ぎると効果が落ちるため、無駄なく使える量を用意することをおすすめします。
使い切れなかった消毒液は、流しに廃棄することができますが、保管する場合でも誤飲や事故を防ぐために、お子さんやご家族の手が届かない場所に置くなど、安全に取り扱ってくださいね。
わたしはズボラなので、キッチンハイターを濃い目に使用していますが、リスクもあるので一般的ではないようです。消毒液の希釈方法や使用上の注意点は、製品やメーカーによって異なります。そのため、具体的な使用方法や濃度については、各製品の説明書やメーカーの公式情報を参照することをおすすめします。
家族間の連絡方法を工夫して感染拡大を防ぐ
最後に、ちょっとした工夫として、家族間の連絡方法について紹介したいと思います。今では、小さなお子さんにもスマホを持たせている家庭が多いと思います。家族の中で感染が確認された場合、感染者とその可能性が低い人で部屋を分け、直接顔を合わせる機会を減らすために、携帯やスマホを活用して連絡を取り合いましょう。スマホで連絡を取ることで、感染者と隔離されている人が直接話す機会を減らし、感染拡大を防げます。
特に脱衣所やお風呂場はノーマスクで鉢合わせる可能性が高いため、使用する順番を工夫することでリスクを減らせます。
スマホを活用して連絡を取り合い、「いまお風呂を使っているから待ってね」「お母さんは寝室にいるので、どうぞお風呂場を使って下さい」などの声掛けをすると、お互いに安心して過ごせる環境を作ることができます。
まとめ
・インフルエンザやコロナにはアルコールと塩素系漂白剤が有効。
・感染性胃腸炎にはアルコールが効かないため、塩素系漂白剤を使用。
・マスクの適切な使用と消毒の工夫で家庭内感染を防ぐ。
・スマホを活用して感染拡大を防ぐ
感染症対策は少しの工夫で負担を減らせます。自分に合った方法を見つけ、この『ひと工夫』で、ちょっと楽して、無理なく続けていきましょう。
当サイト「ちょっと楽になる介護奮闘記」は、実話をもとに書いていますが、登場する人物名や団体名、場所に関してはすべて仮名を使用しています。